2008-04-17

「趣」と「たたずまい」(「おもてなしの経営学」を読んで)

おもてなしの経営学 中島 聡 (著)
著者のブログ: Life is Beautiful

Life is Beautiful でご存知方も多いかと思いますが、中島さんが書かれた「おもてなしの経営学」を読んで、私なりに思うこと。

「おもてなし」というキーワードがとても響きが良く、ビジネスを行う上でともて大事なものを言い当てていると思います。

ただ、自分自身読みながらもう少し付け加えたほうがよいような気がしたんです。

ビジネスの根底に必要なものは「おもてなし」に加えて、もう2つあるといいんじゃないかと。

  • 「おもてなし=振る舞い」
  • 「趣(おもむき、風情)=味わい。個性」
  • 「佇まい(たたずまい)=雰囲気」
もしかすると、要約すると「それは、「おもてなし」でしょっ。」ってことになるかもしれないけど、自分としては3つが、さまざまな業界、業種のクリエイターのみならず、ビジネスマンに必要じゃないかと思っています。

まぁ、「おもてなし」を補足するキーワードが自分なりにほしかったのです。

「おもてなし」だけだと「しっくり」こなかった。
ユーザ・エクスペリエンス=お客様を「おもてなし」する。

ユーザビリティやアクセシビリティと、ユーザエクスペリエンスが、自分の頭の中で境界線が引けなかったので、これは非常にしっくりきたんです。

ただ、Appleの製品だけでなく、自動車やバスケットボールシューズ、日用雑貨なんかも、愛着のあるものを考えると、つくりの気の利いた配慮だけじゃ足りないような気がしたんです。

スティーブ・ジョブスは"魂"=スピリッツをこめなければいけない。という感じも悪くない。

しかし、何か使った時の満足感ではなく、充実感というか、何か落ち着きやちょっとした興奮というのでしょうか。
心が「わくわく」する感じ。

そんなものが物を作り、人々に提供する人が持つ必要があると思うんだけど、なんだろうと考えていました。


「Apple MacBook Air」を触って気づいた「趣」と「佇まい」

「佇まい」
妻の買い物に付き合い大型家電量販店に行き、パソコンの販売ブースを見ると、「Apple MacBook Air」が展示してあったのです。

テレビCMやWebで見ていて、ちょっと値段が高いから、少し様子見ておこう位の製品と思っていたのですが、展示品はそこで私を待っていたかのように見えるのです。

薄いシルバーのボディは一目見ると、「あれっ?」、「何?」って感じで、その存在感に引き込まれる。

そして、話しかけるはずもないのに「やぁ!こっちおいでよ!」って語りかけてくるような雰囲気。

特に、量販店だからということもあるかもしれませんが、WindowsのOSがインストールされているPCがずらりと並んでいる中で、モノクロを基調としたブースに、白やシルバーの筐体があるから、なお更目立つのかもしれません。

まさしく、「おもてなし」をするための演出ができているように思ったのです。

その場所の空気感、そのブース、商品からかもし出される雰囲気。

それは、その商品やサービスの持っている「佇まい」であると思うのです。

「趣(おもむき)」
さらに「Apple MacBook Air」を操作をしてみると、まるで人と会話やダンスをしているかのように、何か一体感を覚え、ぐいぐい引き込まれていくのです。

そして、一通り使ってみると、なぜか微笑んでいるのです。

妻もMacを使うクリエイターです。

私が「Apple MacBook Air」を使ってみるように促すと、最初は、「画像処理なんかするのにノートPCなんていらないから・・・」といいながら、使い慣れないトラックバッドを操作していたのですが、やはり私と同じようにしばらく触っているではないですか。

そして価格を見て、「もう少しがんばって仕事しないと買えないねっ」と。

使ってみてその商品の風情というのでしょうか、味わいがある商品なんだなぁと思うのです。

それは、その商品やサービスの持っている「趣(おもむき)」であると思うのです。

WindowsとMacの違いを考えてみる。
これは、利用者の視点からみた私の感想です。

私は、現在は仕事上Windowsを使う環境にいますが、デザイン事務所などにお邪魔してMachintoshも普通に使う環境が以前あったので、それぞれを使った経験があります。

そこで、2つの製品を使ってみて、感じたこと。

GUI部分の色使い
Macは発売当初からモノクロをベースに比較的落ち着いた色使いをしており、インパクトにはかけますが、気持ちを落ち着かせて作業に入ることができるように思います。

一方、Windowsは、原色を多用している感じがします。簡単に言うとデフォルトの16色のカラーパレットの色をあちこちにちりばめて、うるさい感じの印象を受けるように思います。

いわく、Windowsは色使いから、いかにもコンピュータの都合で色を表現しているように感じます。

また、Windowsを作っている人の自己主張のようなもの「すごいでしょ。いろんな色を、このOSは使えるんだよ。すごいでしょ。しかも、はっきりした色がだせるんだよ。すごいでしょ」を感じてしまう。

あるいは、原色を使うことにより、PC自体が攻撃的なように感じになる。

昔のWindowsは、それでも華奢な感じがして愛着も少しはわいたが、WindowsXP、WindowsVistaとバージョンアップされるにつれ、画面に出力される色を多用してしまい、GUIに落ち着きがなくなってしまった。

その点、MacはOSとして色を強く出すことがないというか、カラフルな色を使っても、画面全体の表示面積に対して、ちょうどよいバランスでカラフルなアイコンなどが表現されているように思います。

そう、緑色を使うことで、心が落ち着く。草原ならばなお更。といって、いっぱい原色系の緑色を使えば、逆にうるさくなる。

バランスというものが大事だと思うのです。

操作した時の反応の「タメ」と「クイ」
バンドの演奏をするときに、リズムの「タメ」や「クイ」という言葉があります。

ドラムやベースのようなパートは、一定の間隔で正確にリズムを刻む必要があります。

しかし、ギターやボーカル、キーボード。特に演奏の間奏などのギターソロなんかは、譜面どおりに弾いたのでは、何の味もありません。

多少リズムから遅れて弾き出したりする「タメ」や、あるいはちょっとリズムの出だしより早めて弾く「クイ」を行うことで、個性が出てくるものです。


Windowsは、常にキーボードやマウスから操作を入力、パソコンに命令を与えると、瞬時に答えを画面上に出してきてくれます。

まるで、強迫観念に駆られた人のように、「あれもってきて」というと、すぐに見つけ出し「はい!これでしょうか!」って感じで応答してくる。

きっちりと仕事をするのには、大変優秀なシステムであることは間違いありません。

しかし、遊びがないんですよね。

Macの場合、たぶんWindowsと同じように動作しているはずなんですが、どっかに「タメ」や「クイ」があるんです。

たとえば、画面下などに表示されるDockに並んでいるアイコンにマウスカーソルを合わせるとどうでしょう。

あるいは、アプリケーションが何らかのメッセージを出しているときのアイコンの振る舞いはどうでしょう。

そう、あたかも話しかけてくるような振る舞いをしますよね。

あるいは、スリープモードのときのMacはどうでしょう。

電源部分のLEDが、ゆっり消灯したり、ゆっくり点灯したり。まるで、すやすやと寝息をたてて眠っているように見えます。


時間の使い方による演出
私は、昔プロモーション用にアニメーションもどきを作ったことがあるのですが、何かを動かすときのタイムライン(時間)の調整が難しい。
人が100mを走ることをイメージしてみてください。

スタートダッシュのときは、力がめいっぱいかかているのに、前に一気には進まない。

しかし、次第に加速していく。

トップスピードに入る。

ゴールを通り過ぎると、少しずつスピードが落ちていく。

つまり、一定のリズムでは人は動かないのです。

Appleは、OSの振る舞いにおいて、そうしたところをきめ細かく、まるで人の振る舞いのように表現しているように思うのです。

一定のリズムではなく、絶妙なスピード感を調整して。

それが、利用者の時間のゆとりを作り出したり、愛着がわくひとつのファクターだと思います。

一方、Windowsは、パソコンの性能を最大限に引き出し、無駄のない動作をするように動いてくれます。

事務的な対応をする受付の人のように、余計な話しもしない、本当にすばらしいシステムです。

しかし、それが利用者の時間効率を上げているのにもかかわらず、逆に利用者が次々と仕事をしなければいけない、あるいは次々とパソコンに仕事を与えなければならないように振舞う。

ただし、効率重視の人にとっては都合がよいし、カスタマイズも容易だし、プログラムだていろんなのがたくさんある。

ただ、味気ないのです。人間味を感じる振る舞いがないのですから。


今回は、この辺でいったん終了。

  • 「おもてなし=振る舞い」
  • 「趣(おもむき、風情)=味わい。個性」
  • 「佇まい(たたずまい)=雰囲気」
コンピュータの世界とは間逆にあるような、自然や人間の営みで培われた思いやり、ゆとりみたいなものをいかに電子機器の中で作り出していく、演出していくのかという視点が、私は必要じゃないのかなと思う次第。

「おもてなし」
裏があっても
「おもてなし」



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