産業デザイン交流協議会が主催した「感性価値創造シンポジウム(地域のものづくりとデザイン)」に参加してきました。
このシンポジウムは、経済産業省が策定した「感性価値創造イニシアティブ」を啓蒙する一環の取り組みということで、国が各産業に対してデザインをどのように捕らえ、取り組んでいるのかを確認したいと思って参加してみました。
私は、グラフィックやWeb、コンピュータソフトウェアのインタフェースに対するデザインを行っているので、全体的には地域産業における意匠関係のデザインに視点を置いた今回のシンポジウムは少なからず違和感があったが、有益な内容もあったので、レポートがてらに意見を書きたいと思います。
シンポジウムのプログラムは次のとおり。
●基調講演(1)
「第四の価値軸の提案~感性イニシアティブ~」
経済産業省 製造産業局 デザイン・人間生活システム生活室
●基調講演(2)
「日本のものづくりとデザイン」
某デザイン事務所代表
●事例発表
「各県からデザインや感性価値向上の取組について」
4件発表
●パネルディスカッション
「地域のものづくりにおける感性価値を考える」
コーディネーター、基調講演者2名+
某工業大学デザイン工学科講師
某企業商品開発部統括マネージャの4名
では、それぞれコメントを入れていきます。
●基調講演(1)「第四の価値軸の提案~感性イニシアティブ~」
国の政策として地域産業の活性化を図るため、これまでものづくりの価値として捕らえていた「高機能」、「高信頼」、「低価格」という3つの軸に加え、これまで可視化していなかったデザイン部分を「感性価値」という言葉で取り上げ、4つの軸が経済価値を生むことの重要性を訴えておりました。
今後の国際競争においても重要であり、感性に訴える感動や共感、共鳴による価値を創造し、提供することが新たな需要を喚起することに間違いがないし、顧客の視点を理解するためにも作る側との共創の場を作っていくことが重要であるということであるといった話でした。
しかし、この時点で私は「デザイン」という言葉の定義があいまいで、違和感を覚えた。
デザインの定義は、非常に広く捉えることができ、範囲を限定しないと何を言っているのか聞く側が混乱してしまう。
実際に、製造業における製品に対するデザインを言っているのか、製品を利用する利用者に対して製品の付加価値によるライフスタイルのデザインを言っているのか、フォーカスポイントがあいまいであったように思う。
まぁ、ここでは、経済産業省の製造産業局、国としての取り組みを紹介するものとして理解できたので良かった。
●基調講演(2)「日本のものづくりとデザイン」
こちらの講演は、今回のシンポジウムの中で一番私にとって有意義な内容であった。
っというか、自分の思考するポイントにうまくはまった内容であった。
なので、少し長いコメントになります。
○成人健常者の平均を対象としたデザインになっていなか?
現在作られている製品は、成人健常者の平均を対象としたデザインになっているが、それだけでいいのか?という提言。
これには、Webにおいてもアクセシビリティなどの課題もあり、確かに高齢者の方や健常者ではない方に対する配慮をもう少し考える必要があると感じたし、今後は言葉だけではなく、実際にそうしたことを考慮してものづくりを実践していく必要があると痛感した。
○生活を豊かにするデザインになっているか?
次に、過去の事例として30年前の朝の台所の模様が取り上げられた。
そう、かまどの写真。
そこに対する技術の視点からのイノベーションとして、炊飯器の絵を紹介していた。
炊飯器を利用することによって、利用者の生活スタイルが劇的に変化する。
つまり、ここにライフスタイルを変えるデザインがあるのだという話をされて、デザイナーたるものそうした価値を提供する必要があるなぁと感じました。
この炊飯器の場合のベネフィット(利便性)やバリュー(価値)は、次のようなことを提示されていた。
- 火起しがなく、ご飯が簡単に炊け、便利になる。
- ワンタッチでご飯が炊けることによる時間の短縮
- 釜から炊飯器に変わることによる台所のスペースの有効利用
- 薪などを使わないため台所が清潔になる
まとめると、利用者の生活が1ランク上になる価値を提供し、生活を豊かなものにするものづくりの取り組みが、デザイナーのもっとも大事な視点だということです。
○デザインの有効性の発見(意味)しているか?
その他にも、次のようなお話も、デザインとは何かを考えさせられる非常に意義のある内容でした。
正確に伝え切れませんが、エッセンスだけでも感じてもらえればと思います。
- 配達に使えるバイク
これにより、ヘルメットや荷物を運ぶ荷台の改良など、周辺の製品の需要を生む - どこでも音楽を持ち歩けるウォークマン
活動範囲が広がる、生活スタイルが変わる - どんなサイズの電池でも使える懐中電灯
災害時にあわてることがなくなる安心感が生まれる - 右利きでも左利きでも使えるはさみ
メーカーとデザイナーの長い付き合いから生まれた信頼関係によるコラボレーション - 幼児の体温を測りやすくした電子体温計
測定器具の使いやすさを追求した角度15度のソリューション - 防弾加工をしたバラのブローチ
銃社会における安心感の創出 - 置き引き防止のために開発された溝付きのいす
盗難防止による安心感
まとめると、デザインの有効性(意味)については、顧客の生活を豊かにするほかに、他製品の需要を喚起したり、活動範囲を広げる、あるいは生活スタイルを変えたり、安心感を与えるといったものがあり、そうした視点を持ってものづくりに取り組む必要性あるということでしょか。
○地域産業の活性化の可能性?
こちらは、産業の活性化を進めるために、デザインという視点から何ができるのか。あるいは、何が必要なのかというお話でした。
- 過去の事例を蓄積し、それらを見つめなおすことで、新たな発想、新しいソリューションを見つけることができる。
- 効果の予測(見積)をする(できれば数値化すべき)ことで、その製品やそのデザインがどれくらいの価値であったのか測定、評価することができる。
- 自分(達)が何ができるかをメニュー化することで、利用者などの相手が何をしてくれるのかが理解でき、安心して何をしてもらうかを選ぶことができる。
- 外部のメディアを利用しPR活動を積極的に行うことで、自分(達)がなにができるかを広く知らせることができ、その存在価値を認められ、仕事がやってくる。
- またPR活動を進めながら、相談に乗ることで、利用者が信頼し、良好な関係ができる。
まとめると、自分(達)ができるデザインを飛躍させるために、過去の事例を引っ張り出したり、周辺の人に情報を発信したり、人脈を使って情報を収集したり、相談することで、新たな視点の発想が生まれ、それをさらに蓄積することで、顧客の生活スタイルを豊かにするためのデザインスキルが身につくということでしょうか。
○新たなデザインの芽を作っているか?
- デザイン活動の価値を経営資源としてみるように経営陣に働きかけているか。
- パートナーやブレーンを作り、コミュニケーションをとり情報を活用しているか。
- 自分(達)の魅力は何か?あるいは魅力を作ることで、人が集まり、信頼される状態になる。
- 安心、安全なデザインが求められていることを理解すること。
- 目標や意味のないデザインはないということを理解すること。
- 余韻を残すデザインを心がけること。
まとめると、デザイン活動を経営資源として捉える活動が必要であり、前述した内容と重複するが、パートナーやブレーン作りが重要なんですね。
しかも、むやみにデザインするのではなく、その製品に求められる機能や性能、あるいは利用者が満足するために必要な要件といった目標や意味を理解し、デザインすることが必要であり、そうしたことをクリアする製品をデザインすることで、この製品買ってよかったな。大事に使いたいな。という余韻が生まれるんだと思います。
●事例発表「各県からデザインや感性価値向上の取組について」
ここは手短に。
事例紹介においては、デザインというものを活性化させるためのさまざまな取り組みを聞くことができました。
地域によって、日本国内でも文化(カルチャー)というか、人の気質的なものがあり、ビジネスの進め方も、最適な方策を考えるという、ビジネスプロセスにおけるデザインが必要であると思いました。
●パネルディスカッション「地域のものづくりにおける感性価値を考える」
実は、パネルディスカッションは時間が足りなくてできませんでした。
○海外との商取引の契約は大丈夫か?
パネルディスカッションの前の事例発表が長くなったことと、パネルディスカッションの前にあった某工業大学デザイン工学科講師のプレゼンが、無駄に長かった。
進行役の人が手短にといっているのに、過去の自分の経験談を話、かつ要点がぼやけ、自慢話に聞こえてきてしまう。
しかも大学の講師だから少ししゃべりは大丈夫かと思ったら、職人気質の人で、話も途切れ途切れ・・・
そんな中でも、海外で生活すると感じることらしいのですが、日本の美意識の普遍的な価値をもっと大事にしたほうが良いですといってました。
また、グローバルな視点でものづくりをしていく必要があり、海外との取引においては商習慣などを知っている人を入れましょうという、とても大事なことを言っていました。
これは、ほんと国を超えると商習慣が異なり、取引を行う前の契約においては、しっかりつめないと、日本のようなトラブルがあったときには協議しましょうね。というような契約書では、とんでもないリスクを作るので、すべて取引プロセスを洗い出して、それぞれのリスクを洗い出し、リスクの重要度の順位をつけならが、事故が起きたときの対応策をはじめから契約書に盛り込むことが大事です。
○デザイン面で日本はアジアの中で優位性があるのか?
次に某企業商品開発部統括マネージャさんもプレゼンがあり、こちらはさすがにグローバルにビジネス展開する企業さんだけあって、製品のライフサイクルにあったデザインをすべきだというお話でした。
こちらのプレゼンで気になったのは、日韓中の大学生にテーマを与えデザインしてもらったんだそうですが、日本の学生のほうがデザインセンスがあるというのです。
そして、このまま維持すれば、日本もアジアではある程度の競争力を維持できるというではありませんか。
●日本の中小企業はもっと危機感を持って!
最後に、私なりの意見を・・・
某企業商品開発部統括マネージャさんもプレゼンにするコメントになりますが一言。
それは、日本人から観た視点での評価であり、今や韓国はサムスンや現代自動車など、デザイン面を重視したものづくりが行われ、諸外国にビジネスを展開し、それなりの評価とシェアを持っていることを理解しているのでしょうか?
また、中国においては国がデザインを重要視し、大学などの教育機関でもデザインに力を入れていることを理解しているのでしょうか?
何より、経済産業省の方もはっきり話をしたほうがよいと思うのですが、これまでの日本のような製造業の形態では、低賃金による労働者を使うアジア諸国の企業につぶされてしまうという現実を。
だから、地方でものづくりに特化し、国内だけをターゲットにしたビジネスでは、外国企業が同じようなものを低価格で日本国内に提供してくることで国内の企業はつぶれていくのです。
すでに、グローバル、そう世界を相手にしたビジネスで競争していかないと、企業そのものが消えてしまうのです。
そうした諸外国の企業との差別化を図るためにも、デザインという感性価値を創造するものづくりが重要であるということをもっと強く語ってほしかったものです。
そんな警笛を、基調講演(2)「日本のものづくりとデザイン」から読み取れた人はどれだけいたんだろう。
せめて、この本を読んでから講演者やパネリストになってほしいものです。
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